休職期間満了間近となり復職可能の診断書を提出される従業員。医学的に見て通常勤務が期待できない場合でも主治医は本人の希望通り復職可能の診断書を発行することがほとんどです。その後上司や人事労務担当者が本人と面談し通常勤務は難しい印象を抱くことは珍しくありません。産業医は面談を行い必要な情報を収集し復職可否の意見を出しますが、ご本人の職が掛かっている状況では「前に倣え」で復職可能の意見を提出することが経験上多い印象です。建前上会社に復職可否の判断主体があるといえ医師意見2枚に逆らい復職不可とする判断はリスキーであり訴訟に発展した場合ほぼ負けが確定してしまいます。実質的に不完全な労務提供を強制されてしまうという問題があります。
一方で産業医が客観的事実または会社の意向に沿い復職不可とし最終的に会社が復職を認めない場合は勤務が難しい証拠が用意できたとしても、従業員側には主治医の復職可能診断書という強力な証拠があり最終的に会社が勝訴したとしても訴訟トラブルに発展し消耗する可能性が高いと言えます。
ここで第3の選択肢として考えられるのが、たとえ通常勤務が難しいと思っても、いったん復職させその後の勤怠不良があれば再休職とし就業規則に定められた通算規定を持って休職期間を通算し満了退職とする方法です。
この回りくどい方法には利点があり、人事労務担当者や産業医の恣意的な判断ではないので恨みを買いづらい、実際の失敗を持って勤務が困難な状態を示しやすいことです。ただし従来は前提となる通算規定について判例がなく合法であるか不明でした。
このたび休職期間通算規定に関する重要な判例が出ました(フィデリティ証券事件東京地裁令和6年12月10日)。この判例では復職後わずか10日で再休職となり就業規則の通算規定により休職期間が通算されることを前提に既に休職期間を使い切っていたためいきなり休職期間満了退職が有効であると裁判所は認めています。
注意点として地裁判決であり判例法理が確立されたと言えないこと、通算規定の有効性そのものは争われていないこと、あらかじめ自社の就業規則に通算規定を定めておく必要があること、再休職命令が必要になること、誰の意見を根拠に再休職とするか難しいこと(この判例では主治医ではない“専門医”の意見。会社側精神科専門医でしょうか。産業医意見でも可能?)が挙げられます。
今後の判例を注意深く追う必要がありますが、第3の選択肢が復職スタンダードとなる日も来るかもしれません。
参考文献 mukai_lawyer_nl_vol.211.pdf
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