私傷病休職制度は一般法の定めのない就業規則上の制度であり会社は自社の就業規則に定められた通り運用する必要があります。多くの企業で「○○の場合は休職を命じる」など就業規則に会社が命じて休職に入ることが定められています。
会社が休職を命じないまま休職期間満了を迎えた場合退職が有効であるか争った北港観光バス事件(大阪地裁平25.1.18判決)があります。労働者を退職扱いとするために①労働者に就業規則上の休職事由が存在すること②使用者が休職命令を発したこと③休職期間が満了したことが必要と判示されています。本事件では単に休職制度を説明しただけで休職を命令したとは評価できず休職期間満了退職は無効と判断されています。
この事件と同様に比較的多くの企業で従業員から休職診断書の提出を受け内部的に私傷病休職としつつも休職命令を出していない実態があります。これらが特に大きな問題になり得るのは大企業など休職期間が長く(3年など)休職中の手当が支給されているケースです。3年経って休職期間満了が間近に迫った際に休職命令を一度も発令していないことが発覚し、改めて休職命令発令し休職期間満了までさらに3年間(計6年欠勤)といった事案です。
一般的な産業医も人事労務担当者も休職命令発令の必要性について理解していない場合が多いため注意が必要です。
休職命令は書面で出すべきで、いつから休職に入るか、いつ休職期間が満了するか、社会保険料の従業員分負担、復職の手順等を記載します。とくに「私傷病で7日以上欠勤した場合は休職を命じる」といった就業規則の場合休職開始日と欠勤開始日は別の日となり間違えると無効な命令となるため(石長事件:京都地裁平成28年2月12日)要注意です。また休職が複数回に及ぶ場合も毎回休職命令が必要となります。
参考文献
労働判例2013. 12. 15(No.1078)付録 35
休職について説明したにすぎず休職を命じていないとされた事例 | 弁護士 西川 暢春 Nishikawa Nobuharu
解雇124(北港観光バス(休職期間満了)事件) | 栗坊日記
訴訟リスクを回避する3大労使トラブル円満解決の実践的手法